
発音の不明瞭さは「お口・聞こえ・ことば」の3方向から見ていきます
子どもの発音が不明瞭になる原因は、舌や唇の動き、歯並びや顎、聞こえ、ことばの発達など複数あります。形や神経にはっきりした原因が見つからないまま、音の誤りが習慣になっている場合も多くみられます。多くの音は就学前後にかけて整っていくため、年齢の幅と本人の困りごとを合わせて判断します。この記事では、見守ってよい様子と相談を考えたいサイン、家庭での接し方、歯科を含む相談先の役割を順に整理します。言い直しをさせてしまったと感じていても、関わり方は今日から変えられます。
この記事の要点まとめ
- 発音の不明瞭さには、口の動き・聞こえ・ことばの発達など複数の要因が関わります。
- 多くの音は成長とともに整いますが、伝わりやすさや本人の困りごとも見守りの目安です。
- 家では正しい音で自然に返し、気になる点に応じて小児科・耳鼻咽喉科・歯科などへ相談します。
子どもの発音が不明瞭になる原因にはどんなものがある?

原因は、お口の形や動き、聞こえ、ことばの発達など複数あります。形や神経にはっきりした原因が見つからない「機能性」のものも多くみられます。私は発音の相談を受けたとき、音だけでなく「なぜ発音しにくくなっているのか」を、口の癖や呼吸、姿勢までさかのぼって考えるようにしています。
発音は舌・唇・顎・息と「聞こえ」が連動して生まれる
音は、肺から出る息の流れを、舌・唇・顎・上顎の形で細かく調整してつくられます。子どもは自分の声を耳で聞き返しながら、少しずつ正しい音を覚えていきます。
どこか一つの働きが育ちきっていなかったり、聞き取りにくさがあったりすると、「さかな」が「たかな」になる置き換え、音が抜ける省略、音のゆがみといった発音の誤り(構音の誤り)として現れます。
構音障害の4つの分類(機能性・器質性・運動性・聴覚性)
発音がはっきりしない状態を「構音障害」といい、おもに4つに分けて考えます。「機能性」は、形や神経にはっきりした原因がなく、まちがった音の出し方がくせになっているものです。「器質性」は、口蓋裂(上あごの割れ)や舌の裏のすじ(舌小帯)が短いなど、お口の形によるものを指します1。
「運動性」は、脳性まひなどで舌や唇を動かす神経・筋肉の働きがうまくいかないために起こるものです。「聴覚性」は、聞こえにくさによるものです。ただ、相談に来られる子どもの多くは機能性に当たり、成長とともに整っていくことも少なくありません。
口が開いたまま・食べ方の気になる様子は発音とつながる?
関わることがあります。飲み込むときに舌で前歯を押す癖があると、前歯にかかる力がふつうより強くなり、出っ歯や、前歯が噛み合わない歯並びを招くことがあります2。こうしたお口の筋肉の使い方が、発音のしにくさに関わることもあります。
口呼吸が習慣になると舌の位置が下がりやすく、上顎の育ちに影響することがあるといわれています。舌が上顎から離れた状態が続くと、サ行・タ行・ラ行のように舌先を細かく使う音がつくりにくくなることがあると考えられています。当院は口呼吸を歯並びや姿勢の乱れの「始まり」ととらえ、お口の機能と姿勢を一緒に見ることを大切にしております。
発音だけでなく「ことばの発達全体」に目を向けたい場合
語彙が増えにくい、文で話しにくい、指示が通りにくいといった様子があるときは、発音とは別に、言葉の遅れや発達性言語障害(ことばの理解や表現の育ちに関わる状態)が背景にあることもあります。
ポイント
「音の出し方」の問題か、「ことば全体」の問題かによって、相談先が変わります。
何歳ごろまでの不明瞭さなら成長を見守ってよい?
発音は舌や唇を細かく動かす力が育つにつれて少しずつ整っていき、舌先を細かく使うサ行やラ行などは、ほかの音より時間がかかることがあります。年齢だけで決めず、「伝わりやすさ」と「本人の困りごと」を合わせて判断しましょう。
2歳・3歳・5歳で違う、発音の育ち方の目安
次の表は一般的な流れで、個人差が大きいことを前提にご覧ください。
| 年齢 | よく見られる様子 |
|---|---|
| 2歳ごろ | 単語や二語文が増える時期。音の置き換えが多いのは自然なこと |
| 3歳ごろ | 家族以外に伝わる言葉が増えてくるが、赤ちゃんことばが残りやすい |
| 4〜6歳ごろ | 多くの音が整う。サ行・ラ行は就学前後まで揺れることもある |
2歳・3歳で発音がはっきりしないのは、舌や唇を細かく動かす力がまだ育つ途中だからです。置き換えや省略の多くは、育つ途中でよく見られる誤りです。
見守ってよい様子と相談を考えたい様子の分かれ目
「年齢」「伝わりやすさ」「本人の気持ち」の3つで整理すると判断しやすくなります。年齢相応の誤りで言える音が少しずつ増え、家族以外にもおおむね伝わり、本人が気にせず話しているなら、見守りやすい状態です。
一方、多くの音が置き換わったままで家族以外に伝わりにくい状態が続く、特定の音がいつも横から息がもれるようにゆがむ、といった場合は相談を考えたい目安です。聞き返されると話すのをやめる、園の先生から伝わりにくさを指摘された、という様子も同じく目安になります。
年齢にかかわらず早めに相談したい変化
呼びかけへの反応が鈍い、テレビの音を大きくしたがる、中耳炎をくり返すときは、聞こえの確認を先にしましょう。
一度出ていた言葉が減った、よだれや食べこぼし・むせが目立つ、鼻に抜けるような声が続く場合も、年齢を待たずに医療機関へ相談してください。言葉が減ったと感じたときは、できるだけ早めの受診をおすすめします。
「そのうちはっきりする」は本当?家族で意見が分かれたときの考え方
自然に整う子が多いのは事実です。ただ、口の癖や聞こえなどの背景が残っていると、誤った音の出し方が習慣になることもあります。
相談は「すぐ訓練を始めること」ではなく、今の状態を知って見守り方を決めるための手段です。祖父母には「様子を見るために、一度確かめてもらう」と伝えると、気持ちを共有しやすくなります。
家庭ではどんなサインに気づき、どう接すればよい?

家庭では、口元・舌・食べ方・呼吸の様子をそっと観察し、言い直しをさせずに正しい音を自然に聞かせることが、話す意欲を守る近道です。何度も言い直させてしまったと気にしている方も、関わり方は今日から変えられます。
家で見ておきたいお口と呼吸のサイン
ふだんの生活の中で、次のような様子がないか見てみましょう。
- テレビを見ているときや寝ているときに口が開いている、いびきがある
- 唇が乾きやすい
- 舌が上下の歯の間から見える
- くちゃくちゃ音を立てて食べる、丸飲みする、食べこぼしが多い
- 飲み込むときに口元に力が入る
- 座っていると背中が丸まりやすい
お口の筋肉の使い方は、歯並びや発音と関わりうると報告されています3。姿勢の崩れは舌の位置と関わることがあると考えられているため、お口と姿勢は一緒に見ていきたいところです。
言い直しをさせずに正しい音を届ける接し方
何度も言い直させる、笑ったりまねしたりする、話を途中でさえぎるといった対応は、話すこと自体を避ける気持ちにつながりやすくなります。
子どもが「とうきゅうしゃ」と言ったら、「そう、救急車だね」と正しい音で自然に返してみてください。まず話の中身に反応し、聞き取れないときは「もう一回教えて」と責めずにたずねることが、落ち着いて話せる土台になります。
シャボン玉やストローで息を吹く、頬をふくらませる、よく噛んで食べるなど、遊びや食事の中で口を動かす機会を増やすのもひとつの工夫です。
相談するときに役立つ様子の記録の取り方
言いにくい音と置き換わり方(例:「サ」が「タ」になる)、伝わりにくい場面(家・園・友達との会話)、聞き返されたときの本人の反応、口元や食べ方の様子を、短くメモしておきましょう。
自然な会話をスマートフォンで動画に残すと、相談のときに様子が伝わりやすくなります。記録のために無理に言わせようとしないことも、あわせて心がけてください。
ポイント
正しい音は「言わせる」のではなく「聞かせる」。観察と記録は、子どもが気づかない範囲で続けましょう。
どこに相談すればよい?歯科で確認できることは?
聞こえや体全体の育ちが気になるときは小児科や耳鼻咽喉科、ことばの育ちや発音のチェックは言語聴覚士のいる相談先、舌や唇の動き・歯ならび・あご・口のくせは歯科が窓口になります。気になる点に合わせて、いくつかを組み合わせて相談できます。
小児科・耳鼻咽喉科・ことばの相談窓口・歯科の役割の違い
| 気になる様子 | 主な相談先 | 確認できること |
|---|---|---|
| 発達全体、体の様子 | 小児科 | 発達や全身の状態、必要に応じた紹介 |
| 呼びかけへの反応、中耳炎、鼻づまり | 耳鼻咽喉科 | 聞こえ、耳や鼻の状態 |
| 音の誤り、言葉の遅れ、就学の心配 | 言語聴覚士のいる医療機関、自治体の子育て・発達相談 | 構音検査、言語訓練、就学支援の相談 |
| 口が開く、舌の癖、歯並び | 歯科 | 口の形と動き、歯並び、顎の育ち |
体の動きのぎこちなさなど、神経や筋肉の要因が考えられるときは、医科での評価を先に受けておくと見通しが立てやすくなります。
歯科で確認できる舌・唇の動きと歯並び・顎
歯科では、舌やくちびるの動き、ふだんの舌の置き場所、舌の裏のすじ(舌小帯)のようす、歯ならびやかみ合わせ、あごの育ち、口で息をするくせや飲みこみのくせなどを確かめられます。当院には舌圧測定器と口唇圧測定器(リップル君)があり、舌の力やくちびるを閉じる力を数字で確かめられます。
お口の筋肉の使い方と歯並び・発音には関連が報告されていますが3、歯科だけで発音の原因を決めることはできません。
秋田市で親子の検診と合わせて歯科に相談するときの進め方
親子の定期検診の機会に、記録したメモや動画をお持ちいただくと、口の動きや歯ならびについて具体的にお話しできます。当院では小児の精密検査で、顔やお口の中に加えて発音と飲み込みも確認しております。定期健診でレントゲンを撮影済みであれば、重ねて撮影はしない方針です。
口育士・口栄士・軸育士®の資格を持つスタッフが、呼吸・飲み込み、栄養、姿勢というそれぞれの観点から関わります。相談のあとに治療を申し込む義務はなく、お子さん自身と親御さんが納得してから進めることを大切にしております。
当院では無料相談を行っており、お口と身体の発達プログラムを前向きに検討される場合の姿勢分析・改善提案は3,300円(税込)です。気になっている様子を、まずは私たちと一緒に整理してみませんか。
よくある質問
Q. 3歳で発音がはっきりしないのは心配な状態ですか?
A. 3歳は舌や唇を細かく動かす力が育つ途中で、音の置き換えや赤ちゃんことばが残っていても珍しくありません。言える音が少しずつ増えているか、本人が楽しく話しているかを見守りつつ、聞こえへの反応や言葉の増え方が気になるときは小児科などに相談してください。
Q. 言語訓練はどのくらいの頻度や期間で通うものですか?
A. 一般的には週1回から月に数回ほど通い、数か月で終わることもあれば1年以上かかることもあります。誤りの種類や音の数、子どもの集中しやすさや家での練習の進み方によって変わるため、言語聴覚士が検査の結果をもとに判断します。通院の間隔が空く場合は、家庭での声かけや遊びの工夫を担当者に確認しておくと、日々の関わりにつなげやすくなります。
Q. 舌圧(ぜつあつ)とは何ですか?測ると何が分かりますか?
A. 舌圧は、舌を上顎に押しつける力のことです。測定すると舌の力の目安が分かり、お口のトレーニングの経過を見る手がかりになります。ただし、舌圧の数値だけで発音の原因を決めるものではなく、舌の位置や動き、聞こえなどと合わせて考えます。
Q. 相談や検査にかかる費用はどれくらいですか?
A. 費用は、どこに相談するか、何をするかによって変わります。病院やクリニックでの検査や訓練には健康保険が使えることがあり、市町村の子育てや発達の相談窓口を使う方法もあります。当院の相談は無料で、お口と身体の発達プログラムを前向きに考えるときの姿勢分析・改善提案は3,300円(税込)です。
Q. 小学校に入ってからでも相談できますか?
A. 就学後も相談できます。学校によっては、ことばの教室などの支援を利用できることがあります。園での様子を学校へ引き継ぎ、家庭・学校・相談機関で情報を共有しておくと、支援を途切れさせずに続けやすくなります。
参考文献
1. 言語機能と構音障害 – 歯とお口のことなら何でもわかる テーマパーク8020. https://www.jda.or.jp/park/relation/language_02.html
2. 口腔習癖(指しゃぶりなど) – 歯とお口のことなら何でもわかる テーマパーク8020. https://www.jda.or.jp/park/trouble/BK/index09_05.html
3. Thijs Z, Bruneel L, De Pauw G, et al. Oral Myofunctional and Articulation Disorders in Children with Malocclusions: A Systematic Review. Folia Phoniatrica et Logopaedica. 2022. PMID: 34107494 / DOI: 10.1159/000516414
4. Yavaş M. Epilogue. Clinical Linguistics & Phonetics. 2010. PMID: 20144083 / DOI: 10.3109/02699200903362927
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家族療法カウンセラー資格合格認定証取得
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